ここではt, dの発音変化について学びます。発音記号を用いるので、覚えてない記号が出てきたら、こちらを参照にしてください。
この記事でお話しする発音変化は、「この通りに発音しなければ相手に通じない!」っていうものではないので、自分が話す際には普通の[t], [d]を使ってもらっても全く問題なく相手に通じますが、、、
ネイティブスピーカーの会話を聞き取る際のことを考えると、このような発音には聞き慣れておきたいところではあります。また、どうせ勉強するのなら、自分も使いこなせるようになったら一石二鳥です。
この記事では「どのような発音変化が、どのような時に起きるのか」のパターンやルールについて説明していきます。パターンを覚えるのは、どんな時に発音の変化が起きるのかを知る導入としては役に立ちます。しかし、実際に英語を話している最中に、パターンに当てはまるかなんて考えてる暇はないです。発音変化パターンを覚えて満足せずに、たくさん英語を聞いて話して感覚的に慣れることを目標としましょう。
※flap T, nasalized flap, glottal stopなどの用語を説明時に使いますが、これらの用語を覚える必要はないです。
英語の[t(d)]の発音変化
Flap T & Flap D
flap T (flap D)の音は、日本語のラ行の子音部分と思ってよいです。数年前の大ヒット映画「アナと雪の女王」の歌 “Let It Go” は「レット イット ゴウ」というより、「レリゴウ」という風に聞こえると思いますが、そのときの[t]の発音こそが、flap T (flap D)です!
※flap Tとflap Dは、元の発音が[t]なのか[d]なのかの違いのみであり、音としては同じものを指すので、以下は[d]から変化したものに関してもflap Tと記述します。
単語内の[t(d)]: [母音]+[t(d)]+[母音 または syllabic l]
まずは単語内で起こる場合を見てみましょう。
[t]または[d]の- 前に母音、後に母音またはsyllabic lが発音され
- 後の母音(やsyllabic l)にアクセントが置かれていない場合
挟まれた[t]や[d]はflap Tに変化します。下の単語例のcompetentやaccidentのように前の母音にアクセント無い時にも起きます。
※syllabic lとは、音節を母音なしで作る[l]のことです。単語語尾のアクセントのない音節で起きることが多いです。良くわからない人は単語語尾にある[l]と思ってもらえばOKです。
- 後ろに母音のパターン: water / ladder
- 後ろにsyllabic lのパターン: little / middle
- 前の母音にアクセントがないときも: competent / accident
※determine, adoreなどのように、[t(d)]の後の母音にアクセントがある場合はflap Tにはならないので注意。
今後flap Tが出てくる際は上記のようにオレンジ色で表します。
単語と単語の間の[t(d)]: [母音]+[t(d)]+[母音]
①前の単語の語尾の[t(d)]
後ろの母音のアクセントの有無にかかわらず、flap Tへと変化します。
- it is / good idea
②後ろの単語の語頭の[t(d)]
後ろの母音のアクセントが置かれていないときのみ、flap Tへと変化します。to, tonight, today, tomorrow, togetherなどの[t]が変化するパターンが多いです。
- maybe tonight / (速い発話時の)I don’t know
例外もあるので注意
ほとんどの場合は上記のパターンの際に、flap Tへと変化しますが、例外もあります。
- Mediterranean
- newer technology
- free Tibet
- rougher terrain
などは、しっかりと普通の[t]で発音しましょう。
[t(d)]の消失
次に、[t(d)]の音が消えてしまうパターンを紹介します。
単語内の[t(d)]: [nt(nd)]+[母音 または syllabic l]
まずは単語内で起こる場合を見てみましょう。flap Tのときと同様に、
[t]または[d]の- 前に[n]、後に母音またはsyllabic lが発音され
- 後の母音(やsyllabic l)にアクセントが置かれていない場合
挟まれた[t]や[d]はflap Tに変化します。ここで注意したいのは、[t]/[d]の消失は、[n]の前の母音にアクセントが置かれている時に起きることが多いことです。
※[nt]の場合で、前の母音にアクセントがない場合は、[nd]、またはnasalized flapと呼ばれる発音 (上記のflap Tを鼻に息を抜きながら発音した音)に変化することが多いです。もちろんしっかりと[nt]を発音してもOKです。
- 後ろに母音のパターン: interview / understand
- 後ろにsyllabic lのパターン: mental / handle
- 前の母音にアクセントがないときは[t]の消失は起こりにくい: carpenter [kɑ́ɚpəndɚ], warranted [wɔ́rəndɪd] など
今後[t]/[d]が消失する際は上記のよう赤色で表します。
また、[nt]が[nd]やnasalized flapに変化する際は上記のようにピンク色で表します。
単語と単語の間の[t(d)]: [nt(nd)]+[母音]
①前の単語の語尾の[t(d)]
後ろの母音のアクセントの有無にかかわらず、[t(d)]は消失します。
- point of / second album
②後ろの単語の語頭の[t(d)]
後ろの母音のアクセントが置かれていないときのみ、[t(d)]は消失します。to, tonight, today, tomorrow, togetherなどの[t]が消えるパターンが多いです。
- doin’ tonight / when did
例外もあるので注意
flap Tのときと同様に、例外もあります。
- Antony
- been terrific
などは、普通の[t]で発音しましょう。
Glottal Stop (ストップしてリリースしない)
[t(d)]は stop sound なので、- 舌の先が上歯茎に触れて、空気の流れをストップ
- 舌の先が上歯茎から離れ、空気をリリース
の2つのステップがありましたね。
このうち①のステップだけを行う (舌を上歯茎に触れさせるだけで空気はリリースしない) 場合を glottal stop と言います。空気をリリースする際の音が聞こえないので、音が聞こえません。
単語内の[t(d)]: [母音 または n([t]のときのみ) または l]+[t(d)]+[(ə)n、m、l、fなど]
[t]または[d]の- 前に母音、[n]、[l]のいずれかが発音され (ただし[n]は[t]のときのみ)
- 後に[(ə)n]、[m]、[l]、[f]などが発音される場合(ここに関しては色んな子音が考えられます)
挟まれた[t]や[d]は glottal stop に変化します。
glottal stopが起きるパターンは非常に多いですが、後ろに[(ə)n]の発音記号がある際のglottal stopが重要なので、ここではそのパターンについて見ていきましょう。
- 母音+[t(d)]+[(ə)n]: important / student
- [l]+[t(d)]+[(ə)n]: consultant / golden
- [n]+[t]+[(ə)n]: mountain
※glottal stopは、[t(d)]の直前にある母音にアクセントがある際に起きることが多いです。直前の母音にアクセントがない場合 (competent, inhabitant など) はflap Tへと変化することが多いです。直前の母音にアクセントがないけれど glottal stop になりうる単語は少数派ですが、以下のような単語が挙げられます。
metropolitan, skeleton, militant, inheritance, badminton
単語と単語の間の[t(d)]: [母音 または n([t]のときのみ) または l]+[t(d)]+[(ə)n]
①前の単語の語尾の[t(d)]
後ろの母音のアクセントの有無にかかわらず、glottal stopになります。flap Tとして発音してもよかったり、[t(d)]を消失させてもよい場合もあります。
- 母音+[t(d)]+[(ə)n]: not until, not until / good enough, good enough ※flap Tにもなりうる。
- [l]+[t(d)]+[(ə)n]: melt and / world and
- [n]+[t]+[(ə)n]: aren’t in, aren’t in ※[t(d)]の消失が起きることもある。
②後ろの単語の語頭の[t]
語頭の[t]では、ほとんどの場合、glottal stopは起きないと思ってよいです。
- here tonight
- maybe tonight
など。上の例では、ともにflap Tになる方が圧倒的に多いです。
※上の二つの例を、オバマ元大統領が glottal stop で発音している動画を見たことがあります。最初聞いたとき、「ここで glottal stop を使うことあるのか!」となりました。普通の人は会話をしながら「ここはflap Tにしよう。ここはglottal stopにしよう。」とかを、いちいち考えてないので、glottal stop になりうることもあるわけですが、今回の例は稀です。自分が話す際はflap Tまたは普通の[t]の発音をしましょう。
英語の[t(d)]の発音変化: まとめ
いかがだったでしょうか。色んなパターンがあって少しややこしかったかもしれませんね。あくまで今回お伝えしたパターンやルール等の知識は最初の入り口に過ぎません。実際に英語を喋る際に、そんなことを考えてる余裕はないと思うので、ルールやパターンを完璧に覚えるというよりは、「こんな時にこういう音の変化が起きるんだ。」と言った形でインプットした後に、実際にたくさん発音練習をしていった方がよいです。
また、練習する際は、真似るための音声があるとより良いです。最近は電子辞書などにも音声はついていますし、Googleで単語を調べても発音の音声は聴くことが出来ます。音声を聞いて繰り返して発音するといった形で練習していくと、だんだんとルールなどを介さずに、”感覚で発音が分かる”ようになっていきます。ただし、単語と単語をまたがって起こるような発音の変化に関しては、辞書では対応できないので、実際の例文の音声等を使ってみる必要があります。今回解説したような発音の変化は、海外ドラマや映画などで最もよく耳にするので、余裕があれば字幕を付けて海外ドラマ等観てみることをオススメします。(リスニング音声などと比べて聴き取りにくいので、初心者だと心を折られるかもしれませんが。。。)
最後まで読んで下さりありがとうございました!