英語の発音記号の読み方を覚える必要性は?
くだけた会話などで使われる省エネ発音を学ぶ前に、ここでは、単語帳の各単語の下などに載っている発音記号の基本についてまず学びましょう。
発音記号自体を覚えること自体は、英語を話したり聞くために必須なわけではないですし、英語話者も音声学や他言語の発音をしっかり学んだりしてない限り覚えていないのが普通ですが、覚えておくと発音の勉強をする際に役立ちます。このサイトでも使っていくので、一気に覚えられないと思ったら、とりあえずこの記事をブックマークに入れておいて「この記号なんだっけ?」ってなったときにこの一覧記事をつかって確認するといった使い方でも良いと思います。
詳しい発音はさておきとりあえずどんな感じの発音なのかおおまかに知りたい人のために、母音に関してはそれぞれの発音記号においてカタカナ読みで最も近いと思われるものを丸カッコ内に書いています。
このサイトで扱うものは、特に言及してないものに関しては、アメリカ英語での発音です。(他の地域の英語についての話の際には注意書きを入れます。)
英語発音記号の読み方一覧
母音 (Vowels)
長母音 (Long Vowels): [eɪ] [i(ː)] [aɪ] [oʊ] [ju(ː)]
Long Vowel (長母音) とは、英語のアルファベットの母音 (A, E, I, O, U) をアルファベット読み (エイ, イー, アイ, オウ, ユー) した母音のことです。
[eɪ] (エイ)
アルファベット “A” の読み方と同じ発音。[e](エ) と [ɪ](イ) の二つの音でできた二重母音であり、「エイ」といった感じで、発音の初め「エ」と終わり「イ」で音が変わるように発音。
- [e] は日本語の「エ」とほぼ同じ。
- [ɪ] は日本語の「イ」と「エ」の中間音。日本語の「イ」よりは口を開くが、「エ」よりは口を閉じた状態で発音。
※「エー」という風に伸ばしてしまいがちなので注意。
※スコットランド英語の訛りでは[eː](エー)となることがありますが、アメリカ英語含め、二重母音で発音する訛りが圧倒的に多いので、話すときは二重母音で発音しましょう。
[i(ː)] (イー)
アルファベットの “E” の読み方と同じ発音。日本語のイを伸ばして発音する(イー)と思ってもらって良いです。[ː] の部分は省略されることも多いです。
- [i] は日本語の「イ」とほぼ同じ。
- [ː] は長めに発音するという意味の発音記号。
[aɪ] (アイ)
アルファベットの “I” の読み方と同じ発音。
- [a] は、厳密には日本語の「ア」とは異なりますが、訛りの勉強をする際を除いて、発音記号として単発で見ることはないので、そこまで気にする必要はないです。後に出てくる [æ] よりも大きめに口を開いて発音。
- [ɪ] は日本語の「イ」と「エ」の中間音。日本語の「イ」よりは口を開くが、「エ」よりは口を閉じた状態で発音。
[oʊ] (オウ)
アルファベットの “O” の読み方と同じ発音。
- [o] は日本語の「オ」に近い。
- [ʊ] は日本語の「ウ」よりは口を少し開く。唇を丸めて発音。
※「オー」と伸ばしてしまいがちなので注意。
[ju(ː)] (ユー)
アルファベットの “U” の読み方と同じ発音。[ː] の部分は省略されることも多いです。
- [j] は後でも出てくるが、日本語の「ヤ、ユ、ヨ」の母音を除いた部分。
- [u] は日本語表記では「ウ」に近いが、しっかりと唇を丸めて発音すること。思ったよりしっかりと唇を丸める必要アリ。
- [ː] は長めに発音するという意味の発音記号。
短母音 (Short Vowels): [æ] [ɛ] [ɪ] [ɑ] [ʌ]
次は短母音を見てみましょう。
英語のアルファベットの母音 (A, E, I, O, U) には上で見たような長母音もありますが、今から学ぶ短母音と呼ばれるものも、それぞれ存在します。
[æ] (ア)
Aの短母音。
- 日本語の「エ」よりも口を開き、「ア」よりは口を閉じた状態で発音。
※次に出てくる [ɛ](エ) よりも少し口を開いた口の形で発音をする。
※発音が難しいと思う間はもういっそ「エア」と発音するのも一つの手かもしれません。
※ちなみにアメリカ英語では、[m] と [n] の前の [æ] は、[ɛə](エア) と音が変化します。これに関しては後日また記事を書きます。
[ɛ] (エ)
Eの短母音。
- 日本語の「エ」よりも少し口を開いて発音。
※日本語の「エ」は長母音で出てきた発音記号 [eɪ] の [e] の方だと思ってください。
※[ɛ] の発音をする口の形からさらに少し口を開いた状態が、一つ前に出てきた [æ] です。
[ɪ] (イ)
Iの短母音。
- 日本語の「イ」よりは口を開くが、「エ」よりは口を閉じた状態で発音。
※Iの長母音で出てきた発音記号 [aɪ] の [ɪ] と同じ記号です。
[ɑ] (ア)
Oの短母音。
- 口を大きく開いて喉の奥の方で「ア」と発音。
※どちらかと言うと、日本語の「オ」に近いような響きに聞こえます。
※発音が難しい場合は、日本語の「ア」よりも「オ」を代用した方が通じます。
[ʌ] (ア)
Uの短母音。
- 日本語の「ア」よりは少しだけ口は閉じるが、英語の「ア」の発音の中では最も日本語の「ア」に近い。
その他の母音: [ʊ] [u] [ɔː] [ɔɪ] [aʊ] [ə]
[ʊ] (ウ)
- 日本語の「ウ」よりは口を少し開く。唇を丸めて発音。
※[aʊ] の [ʊ] と同じ記号です。
[u(ː)] (ウー)
- 日本語の「ウー」に近いが、しっかり唇を丸めて発音すること。[ː] の部分は省略されることも多いです。
※Uの長母音[juː]の[uː]の部分と同じ発音です。
[ɔ(ː)] (オー)
- 日本語の「オ」より少し口を開いて発音する。[ː] は母音を伸ばす記号。
[ɔɪ] (オイ)
- 上記の [ɔ] と、Iの短母音の発音記号 [ɪ] が組み合わさったもの。
[aʊ] (アウ)
- [a] は、[aɪ] ででてきた [a] と同じ。
- [ʊ] は、[ʊ] で説明したように日本語の「ウ」よりは少し口を開いて、唇を丸めて発音。
[ə] (ア)
Schwa sound (曖昧母音) と呼ばれるこの発音記号は、アクセントの置かれていない音節に現れます。
Schwa sound にはこれが正しい正確な発音だっていうものがないので、そこまでナーバスにならなくて良いです。敢えて言うなら、
- [ʌ] を素早くリラックスして、テキトーな感じで発音したもの
と思ってもらって良いです。
アクセントが置かれていない、すなわち、弱く発音するわけですから、その時々で聞こえ方が変わったり、素早い発音の場合、もはや発音していないこともあります。
R音性母音 (R-controlled Vowels): [ɚ](アー) [ɑɚ](アー) [ɛɚ](エア) [ɪɚ](イア) [ɔɚ](オア) [ʊɚ](ウア)
R音性母音 (R-controlled vowel)とは、要するに最後にRの発音がくっついた母音のことです。
[ɚ] は子音の [ɹ] と同じです。アクセントがある場合は [ɝ] とも表されますがアクセントの有無以外では全く同じ発音です。これらの発音記号は辞書によっては [ər], [əɹ], [ɻ̩] などと表されることもあります。
そしてその [ɚ] を、すでに学んだ [ɑ], [ɛ], [ɪ], [ɔ], [ʊ] などの母音のあとにくっつけたものが、[ɑɚ], [ɛɚ], [ɪɚ], [ɔɚ], [ʊɚ] です。なのでここでは [ɚ] のみを覚えればOKです。
[ɚ] (アー)
[ɚ]/[ɹ] を発音するときの舌の形は、舌の奥を盛り上がらせて、舌の奥の左右の縁は上の歯に触れるようにします。舌の奥の中心部分は左右の縁よりも低い位置にあるので、顔の正面側から見ると舌がUの字を描くようになっている状態です。
発音する際は、そのUの字のくぼんでいる部分(舌の奥の中心部分)に空気が通ります。舌の先は口内のどこにも触れないようにすることに注意しましょう。あくまでポイントは舌の奥を盛り上がらせること!
発音するときには若干唇が丸まります。
子音 (Consonants)
破裂音 (Stops): [t] [d] [p] [b] [k] [g]
破裂音 (Stop sound) を発音するときの流れとしては、
- 一度舌や唇で空気の流れをストップ
- 空気の通過の遮断を止め、空気をリリースする
の二段階があります。
速い発話なんかだと、①だけの場合も見られます。(空気の流れを止めて終了)
※このようなストップしてリリースしない場合については、後日また記事を書きます。
[t]/[d]
まず、日本語の「タ」、「ダ」を発音してみてください。この時、
- 舌の先が上歯茎に触れて、空気の流れをストップ
- 舌の先が上歯茎から離れ、空気をリリース
- その後に母音の「ア」を発音
といった流れが確認できます。このうち①と②の過程が、[t] や [d] の部分です。
[t] は無声音といって、発音している間に喉を触っても振動が感じられませんが、[d] は有声音といって、発音している間に喉を触ると振動が感じられるといった違いがあります。
※もう少しだけ詳しい話をすると、英語の破裂音のうち無声音のもの ([t], [p], [k]) は、日本語で発音する際に比べて空気をリリースする際 (上記の②) にでる息の量が多いという違いがあります。
[p]/[b]
まず、日本語の「パ」、「バ」を発音してみてください。この時、
- 唇を閉じることで、空気の流れをストップ
- 上下の唇が離れ、空気をリリース
- その後に母音の「ア」を発音
といった流れが確認できます。このうち①と②の過程が、[p] や [b] の部分です。
[p] は無声音で、[b] は有声音であるという違いがあります。
[k]/[g]
まず、日本語の「カ」、「ガ」を発音してみてください。この時、
- 舌の奥が盛り上がり、口内の天井(軟口蓋と呼ばれる部分)に触れることで、空気の流れをストップ
- 舌の奥部分と軟口蓋が離れ、空気をリリース
- その後に母音の「ア」を発音
といった流れが確認できます。このうち①と②の過程が、[k]や[g]の部分です。
[k] は無声音で、[g] は有声音であるという違いがあります。
摩擦音 (Fricatives): [s] [z] [f] [v] [ʃ] [ʒ] [θ] [ð] [h]
[s]/[z]
- 基本的に日本語の「サ」、「ザ」の子音部分と同じです。
[s] は無声音で、[z] は有声音であるという違いがあります。
[f]/[v]
[f]と[v]は日本語では出てこないので注意が必要です!特に [f] を多くの人は日本語の「フ」で代用しがちです。
- 上の歯の下面が下唇の上面に触れた状態で発音します。その間を空気が通る時に出る音が [f]/[v] の正体です。
[f] は無声音で、[v] は有声音であるという違いがあります。
[ʃ]/[ʒ]
[ʃ]/[ʒ] は日本語の中だと「シ」/「ジ」の子音部分に近い発音記号になります。
- [ʃ]/[ʒ] は、唇を突き出すようにして発音し、舌の前部や中部は盛り上げられ口内の天井にかなり近い位置をとりますが、どこにも触れてはいません。
[ʃ] は無声音で、[ʒ] は有声音です。
※ちなみに余談ですが、ガーナ訛りの英語では、日本語の「シ」/「ジ」の子音部分と同じ発音をします。正確なアメリカ英語発音を目指している訳ではなくて、相手に通じればOKって考えなら、日本語の「シ」/「ジ」の子音部分で代用してもいいんじゃないかなと私は思います。私は以前は「完璧な英語発音じゃないとダメだ!」って考えで、英語の音声学関連の文書を死ぬほど読み漁ってましたが、数多くある色んな訛りを勉強すればするほど、「結局はコミュニケーションツールなので、多少の日本語訛りがあろうが通じれば問題ない。」と思うようになりました。
[θ]/[ð]
[θ]/[ð] は、thという綴りのみでしか出てきません。日本語のサ行やザ行とは全く発音方法が違うので、代用しないように注意しましょう。
- 発音する際は、舌の先が上前歯の後ろに触れます。その間を空気が通る際の摩擦音が [θ]/[ð] の正体です。
[θ] は無声音で、[ð] は有声音です。
※舌の先を上前歯と下前歯で挟んで発音する方法でも正しい音はでますが、舌を口内のかなり前側に位置させなければならないため、発音がスムーズになりにくいです。なので上記の発音方法をお勧めします。
※[ð] の音は、周りの音に影響されて音が変化することがあります。これについては後日また記事を書きます。
[h]
- 日本語の「ハ」の子音部分と同じと思ってよいです。
[h] は無声音なので、発音中に声帯は振動しません。
※速い発音やくだけた発音などでは、[h] がほぼ聞こえないこともあります。
破擦音 (Affricates): [tʃ] [dʒ]
Affricate (破擦音) とは、stop sound (破裂音、ここでは [t] と [d]) で始まり、fricative (摩擦音、ここでは [ʃ] と [ʒ]) で終わる音のことです。
[tʃ]/[dʒ]
- [tʃ] は [t] と [ʃ] の組み合わせで無声音です。
- [dʒ] は [d] と [ʒ] の組み合わせで有声音です。
鼻音 (Nasal Sounds): [m] [n] [ŋ]
鼻音のポイントは、空気を口からは出ずに (舌や唇によって止められている)、鼻から出すことです。鼻音を発音する際の空気の止め方は、以下のような形で、stop soundと対応しています。
- [m]: [p]/[b] に対応。上下の唇を接触させることで、口からの空気の流れをストップ。
- [n]: [t]/[d] に対応。舌の先を上歯茎の裏に接触させ、口からの空気の流れをストップ。
- [ŋ]: [k]/[g] に対応。舌の奥を軟口蓋に接触させ、口からの空気の流れをストップ。
[m], [n], [ŋ] の3つともすべて有声音です。この三つの鼻音は、単語として発音した際には違いが分かりやすいですが、[m]、[n]、[ŋ]を単体で聴くと音の違いがかなり分かりにくいです。
[m]
日本語の「マ」の子音部分と同じと思ってもらって良いです。
[n]
日本語の「ナ」の子音部分と同じと思ってもらって良いです。
[ŋ]
日本語の「りんご」や「なんきょく」など (要するに「ン」の次に続く音が [k] や [g] の言葉) を発音する際の「ン」の音と同じです。
発音記号を見た時、[ŋg] のように直後に [g] がない限り、「ング」と [g] の音を発音しないように注意しましょう。例えば下記の単語例のkingは日本語だと「キング」と発音しますが、より標準的な英語の発音に近いのは「キン」です。
接近音 (Approximants): [l] [r] [w] [j]
[l]
英語ででてくる [l] の発音には、実は、①light l と ②dark l の二つがありますが、ここでは light l についての発音についての説明をします。(light l と dark l を区別して発音しなくても全然問題なく通じますので。)
- [l] は、舌の先を上歯茎にくっつけて発音します。
- 空気が、舌と左右の歯の間(舌の両サイドの空間)を通る際に出る音が [l] の音の正体です。
[l] は有声音です。
[ɹ]
母音の際に説明した発音記号 [ɚ] と全く同じ発音方法です。子音として扱われているか母音として扱われているかの違いのみです。
[ɹ] は有声音です。
[w]
※上の音声では [w] の後に母音も入っています ([w] 単体で発音するのが難しいため) 。
母音ででてきた発音記号 [u(ː)] と似ています。
- [u(ː)] よりも少し唇を丸めて発音します。
[w] は有声音です。
[j]
※上の音声では [j] の後に母音も入っています ([j] 単体で発音するのが難しいため) 。
- 日本語のヤ行を発音する際の子音部分と同じと思ってもらって良いです。
[j]は有声音です。
英語の発音記号の読み方一覧: まとめ
いかがだったでしょうか。ここに載せてある発音記号をしっかりと身に着けておけば英語で出てくる発音記号の基本はばっちりです。ただし実際にネイティブが日常会話で英語を話す際には音が脱落したり変化してしまう省エネ発音もあります。これらについては今後の記事でしっかり解説していくので、まずはこの記事に書いてあることを意識して日々発音練習をしていきましょう!
発音記号は単語帳で単語を覚える際には常にお世話になるものなので、まだ完璧に覚えきれてはいない人は、このページをブックマークに入れておいて、分からない発音記号が出てくる都度チェックしていくような使い方もありですね!
最後まで読んで下さりありがとうございます。